第22章 【甘】私だけの秘密/岩泉一
なんて、部活の時の及川の言葉を思い出し、思わず笑みが溢れた。
「何だ急に笑って。」
月曜日、部活がオフということで私の部屋にやって来た一は私の膝を枕にし、寝転がっている。普段の態度からじゃ、こうやって一から私にくっついてくるなんて想像もつかない。そんな事を思いながら一の髪を撫でると、猫みたいに目を細め気持ち良さそうな表情を浮かべた。こんな一の姿、私しか知らないのかと思うと、ちょっとした優越感。
「幸せだなあって思って。」
主将である及川が普段ちゃらんぽらんしてる分、副主将である一が実質部をまわしてるようなもの。部活でもクラスでもしっかり者の一のこんな姿、きっと皆想像出来ないだろうな。なんて考えてたら、一は私の腰に手を回し、猫のように擦り寄ってきた。普段気を張り詰めてる分、二人きりになると子供みたいに甘えてくる一の事が愛しくて堪らない。
「一。」
「ん?」
「大好き。」
そう言うと腰に回した手が、私の後頭部を掴んだ。そして、一の方へ引き寄せられた。
「俺の方がお前が俺の事思ってくれてる以上に好きだっつーの。」
その一の真っ直ぐな言葉と視線に急に恥ずかしくなって視線を逸らすと、顎を掴まれた。所謂顎クイってやつ。それに益々、私の顔は赤くなる。二人きりだと、一は甘えん坊でもあるけど、及川に負けず劣らず積極的でもある。
「…な、に?」
「今日も及川に口説かれてたろ。ちゃんとマーキングしておこうと思って。」
小っ恥ずかしいくらい甘い台詞。及川が見たら失神するんじゃないだろうか。そう思いながらまたキスをした。
「一、シたいの?」
「そういう訳じゃねえけど。…まあ、違うっつったら嘘になるけど。今はもう少しこうしててえ。」
「うん。」