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【WJ】短編

第16章 【甘】心から愛してくれる人/相澤消太


「消太くん。」


 私がそう先生を呼ぶと、不愉快というフレーズがピッタリのそんな表情を浮かべた。その表情もいい!堪らなくいい!あの日から、イレイザー・ヘッドとなら本当の恋愛が出来ると思い、猛アタック中であるが、全く相手にされない。先生と生徒の恋愛なんて堪らなくいいと思うのだけど。


「ねえねえ、今度一緒にお出掛け行こう。私、新しい服買いたいの。」
「そういうのはクラスの奴と行け。」


 こうやって冷たい態度を私に取る人は今までいなかった。だから、こうやって先生に冷たくされるとゾクゾクしちゃう。


「消太君、チューしよう?」
「なんでそうなる。」
「私が今したいから。」


 無理矢理キスをしようと、首に手を回した。他に生徒もいるけど、全然気にしない。気にならない。


「やめろ。俺にそれは効かない。」


 そう、だからキスがしたい。私の個性が全く通用しない消太君だから私はキスがしたい。私自身の魅力だけで貴方を振り向かせたい。
 先生は絶対押せ押せタイプに弱いと思うの。だからこうやって、毎日毎日アタックしてるのに、全然靡いてくれない。個性なしだと私自身の魅力ってのはこうも低いものなのかと少し卑屈になってしまう。でも、高い壁程登りがいがあるというもの。


「残念。」


 先生の首にまわした手を解き、廊下に散らばる人々を見る。高い壁程登りがいがあるとは言ったものの、デートを断られ、キスを断られ、全く傷つかない訳じゃない。


「ねえ、」


 廊下を歩く生徒の中で、一番好みの男の子に声を掛け、その子の首にさっき先生にしたみたいに手をまわした。この子に優しく、充分魅力的だよ、そう言って慰めて貰おう。
 突然の私の行動に驚いたその子は顔を真っ赤にして固まる。彼との距離が徐々に近付いていく。

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