第16章 【甘】心から愛してくれる人/相澤消太
唇に伝わった体温は、人の唇のものじゃなかった。私の口は消太君の手によって塞がれていた。
「校内でのそういうのは禁止だ。」
私の唇は確かに消太君の掌に触れていたのに個性が効いていない。ほら、やっぱり私の個性が効かない。だから、私は消太君がいいの。
「ちぇっ、」
そう言って彼の首から手を離した。
「ねえ、私が他の人とキスするの嫌?」
「それは俺に関係ない。」
「そうだったら嬉しいのにな。」
今はまだ恋愛対象としても見てもらえないし、相手にすらされないけど、いつか絶対私自身の魅力で先生の事を振り向かせるんだから。だから、覚悟しててよね、イレイザー・ヘッド。
(咄嗟の事で個性を使うの忘れてたのに、いつもと変わりないな。逢崎の個性は口じゃないと効果が無かったか?…いや、〝物体〟に対しても有効なんだから口でなければいけないなんて制限は無かった筈だ。…なら、なんで俺はいつもと変わらない?そもそも、逢崎が何処の誰といつどんな時にキスしようとアイツの自由だ。なのに、なんでさっき俺は止めに入った?)
その気持ちの意味を知るのは、もう少し先の話。
…ℯꫛᎴ