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【WJ】短編

第15章 【甘】弱虫の一歩/西谷夕


 夕君の誕生日パーティー当日、その日はたまたま私はお休みで、朝から冴子ちゃんの家の台所を借りて料理をしている。冴子ちゃんは今日は日勤との事で、夕方には帰ると言って出ていった。オバサンも今日はお仕事で、人様の家に他人である私が一人台所を占拠して料理を作るという異様な光景。申し訳ない気持ちと、夕君に手料理を食べてもらえる緊張感とで、いっぱいいっぱいだった。


「ただいまー!」


 夕方、龍君が帰ってきた。


「お、おかえりなさい!」
「おじゃまします!」


 龍君の隣には夕君。夕君の誕生日をお祝いすると言ったのだから、夕君が来るのは当たり前で、当然の事なんだけど、夕君がキラキラし過ぎて直視できない。


「エプロン姿いいっスね!」
「え?」
「なんか新妻って感じで。」


 夕君にエプロン姿を褒められ、顔に一気に熱が集まった。特に意味なんてないだろうに、その言葉が嬉しくて、恥ずかしくて。


「冴子ちゃんもそろそろ帰ってくるだろうし、お腹空いたでしょ?先に食べちゃおうか?」
「やったー飯だー!」


 二人共ドタドタとリビングにかけて行った。


「うおー!すげー!」


 テーブルに広がる料理を見て、二人が凄いと褒めてくれた。


「口に合うといいんだけど。」
「「いただきます!」」


 テーブルに並べた様々な料理、育ち盛りの男の子二人には少なかったか、物凄い勢いで箸を進めていく。


「うまい!」
「遥香さん、超美味しいっス!」
「よかった。」


 好きな人に手料理を食べてもらって、美味しいと言ってもらえるなんて、夕君の誕生日のお祝いなのに、私一人こんなに幸せな気持ちになっていいものか。なんて思いながら私も自分の作った料理を食べる。


「ただいまー!ケーキ買ってきたよ!」


 冴子ちゃんも帰ってきて、四人でごはんを食べ、最後に冴子ちゃんが買ってきたケーキに火をつけ、バースデーソングを歌い、ロウソクの火を夕君が消した。照れ臭そうにしながら笑う夕君がなんだか可愛くて、胸がきゅんとなった。


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