第5章 深遠の記憶
「ニノ、バイク見に行くか?」
食事が終わったらさとしが話しかけてきた。
「え…いいの?」
「いいよ。これから特別やることもないしな」
そう言って僕に手を差し出した。
…握っていいのかな…
「なにしてんの。ホラ」
ぎゅっとさとしは僕の手を握った。
「じゃあ行ってくるね」
「あ、智待って」
まさきがさとしを呼び止める。
「洋服に着替えさせてあげて?智ならサイズぴったりでしょ?」
「ああ…そっか。じゃあまず俺の部屋ね」
そう言ってさとしは歩き出した。
まさきは僕の頭を後ろからぽんぽんと撫でた。
「行っておいで…ニノ」
「うん…」
振り返ると、悲しそうな顔をしてた。
じゅんとしょうは何か話し込んでいる。
それを横目で見ながら、部屋を出た。
「俺の部屋こっちだから、いつでも来ていいよ」
「うん、わかった」
木の長い廊下を歩く。
こんな古い建物に入るのは初めてだった。
エアシャワーもない、クリーンルームもない。
人間の住む場所…
「どした?ニコニコして」
「うん…人間みたいだなって思って…」
トントンとスリッパで廊下の木を踏みしめた。
「まるで…人間みたいな生活…」