第5章 深遠の記憶
そう…長野博士…
あの声は長野博士の声だ…
”あんな所、行きたくなかったら言うことをきけ”
そうだ…
俺のことニノにしようとして。
ニノのふりをさせようとして。
長野博士は必死だった。
「どうして…お前はニノじゃないんだって…」
「そうか…きっとアースノールでも予測してなかったことなんだろうな…」
「俺は…なんなの…?二人の人格…?ニノが居るの?」
「…ああ…今、カズの身体にはニノも居る」
「嘘だ…」
「今、目が覚める前の記憶がないだろう?その時、ニノが表に出てたんだ」
「そんな…」
雅紀の腕が俺を包み込んだ。
「大丈夫だから…俺達がいるから…ね?」
「うん…」
身体が震えてる。
どうしていいかわからない。
この体は…誰のものなの…?
俺は…ここにいていいの…?
死んだのに…殺したのに…
「…スエードの握った情報はここまでだ。脳移植後のことについては、調査中だから…なにかわかったら、知らせる」
「凄いんだな…スエードの情報収集力は…」
潤が翔を見ながら身体を起こした。
「ホムンクルスの赤ん坊は、生まれたときからマークしてる…アースノールのガードが硬いから簡単なことじゃないけどな」
「そっか…」