第5章 深遠の記憶
部屋がシンとした。
「嘘だろ…脳移植したっていうのかよ…」
潤が口に手を当ててる。
「そう…だろうな…」
「そんなこと可能なのかよ!?」
「いや…今の医学では無理だ…それに倫理に反する行為だから禁じられてる」
「待って…KAZUの脳を移植できたなら…なんでニノが出てくるの?」
智のその問に翔は顔を伏せた。
「翔…答えてよ…」
雅紀が小さく呟く。
「なんでニノの身体に二人の人格が居るの?」
ぎゅっと、俺の肩に回った手に力を入れた。
「……ニノの身体は左半身に大きな損傷を負ってた」
「頭も…当然打ってたんだよな?」
「ああ…だから、同じ日に死んだKAZUの左脳を…移植したんだ」
「え…?そんなこと…可能なのかよ…!?」
「アースノールでは成功したってことだろうな…普通の病院やラボでは不可能だ」
どういうこと…?
俺は…俺の身体はもうないの…?
そうだよね…死んだんだから…
俺が捨てたんだから…
じゃあ俺は誰なの…
誰になっちゃったの…
N1N0
そう…俺はニノになったんだ…
この体はニノなんだ。
「博士が…言ってた…」
「カズ…?」
「お前は今日からニノだって…」
「博士って…長野博士か?」
「うん…」