第5章 深遠の記憶
そこにはマイクを持って歌ってる俺の姿がプリントされていた。
「それは…俺…」
「KAZUだね?」
「うん…」
翔はその紙をゆっくりと畳んだ。
潤がその紙を翔の手から持って行った。
智も近寄って、潤と二人で見ている。
「ニノと…似てるけど…年が違うね…」
「ああ…俺と同じ年くらいだから…」
潤と智は俺の顔を見た。
「翔…どういうことなんだよ。説明してくれよ」
雅紀の不安そうな声が聴こえる。
「俺は…一度だけアースノールに行ったことがある…」
「ああ…それは聞いたよ」
潤が紙を畳んで翔に差し出した。
翔はそれを受け取ってポケットに仕舞った。
「それは、政府の仕事で行ったんだ」
「政府の…?」
「どういうことだ。翔は政府関係者なのか」
潤の声が一段低くなった。
「潤、落ち着いて…」
智が潤の腕をつかむ。
「翔っ…はっきり言えよっ…!」
「そうだ」
「え…」
「だけど潤、俺はお前が思ってる政府の人間とは反対の立場にいる」
「なんで…?翔は医者だろ…?」
「ああ…医者だ。だけど病院に勤めてるわけじゃない」
「どういうことだ…」
「俺は”スエード”の人間だ」
潤の目が大きく開かれた。