第4章 Knockin' on Heaven's Door
テーブルについた僕にトゥエルブが近づいてくる。
トゥエルブはいつも同じ表情。
見た目は人間だけど、中身はロボット。
触れても温かくない。
ぬくもりというものがない。
本で見た、人のぬくもり。
それを僕は感じたことがない。
トゥエルブの着ている白い服のポケットから体温計がでてくる。
朝食を食べる前に、いつも僕の身体を調べる。
体温を測って、下瞼の色を見て、喉の奥を見て…
一通り終わると、やっと朝食を食べられる。
朝食は、僕がやけどしたらいけないからいつも冷めている。
映像学習でみた人間の食事は、湯気がでていた。
きっと、温かいんだろうなと思う。
前の僕にはこれが普通で、当然のことだった。
だけど…
本の中の人間の世界は…違うんだって…
僕は知ってしまった。
知ってしまったら、もっと知りたくなった。
人間は卵子と精子が受精して産まれて。
おとうさんとおかあさんって人がいて。
百年以上前にあった戦争で、兵士が死んでいく時に叫んだのは”おかあさん”であって…
僕は試験管で生まれたから、そんな存在はいなくて。
酷く、いびつな存在なんだって…
わかってしまったんだ。