第4章 Knockin' on Heaven's Door
まだ小学生だったから、最初のうちはそんなにいっぱいお金を貰えたわけじゃない。
でも中学、高校と進むうちに、どんどんギャラは上がっていった。
18歳になると、両親は離婚した。
父親が最後に会った時に言った言葉…
「和也…逃げてもいいんだぞ…?」
そう…もう母さんはおかしくなってたんだ…
「母さんは和也が居ればいいのよ…」
それが口癖。
でもわかってたんだ。
母さんが必要なのは、俺のお金。
でもね…俺は母さんを捨てられなかったんだ…
だって母さんは、俺が居なくなったら死んじゃうから…
俺は母さんの作る狭い世界だけで生きてきた。
たまに彼女ができても、敏感に嗅ぎつけた母さんに別れさせられた。
「あの女は和也の金が目当てだったの。だから別れて正解なのよ?」
どこにも行けない…カゴの鳥…
だから男に抱かれてもいいと思ったことさえある。
男なら…母さんは警戒しないから。
それから何年も何年も、俺は母さんの作る世界で生きてきた。
声変わりしても、大して俺の声は変わらなかった。
いろいろな音楽のジャンルに挑戦して、俺はヒットを出し続けていた。
俺はずっと音楽業界に居たから、他の世界のことは知らなかった。
ホムンクルスの赤ん坊のことだって…
なにも知らなかったんだ…