第4章 Knockin' on Heaven's Door
声が…聴こえる…
ベッドから起き上がると、母さんが歌を歌っていた。
歌いながら、玉子焼きを作ってる。
それはとても心地いいメロディーで。
ドアの隙間からずっと耳を澄ませていた。
「和也ー!起きなさい!」
母さんの歌が急に途切れたかと思うと、怒鳴り声が聴こえた。
「そんなに大きな声出さなくても聴こえるよ…」
「あら、おはよう。顔洗ってきなさい」
父さんは長期出張で、いつも家を空けてる。
帰ってきたら、めちゃくちゃ母さんとイチャイチャしているから、浮気とかじゃないんだろう。
小学5年生の俺にだってわかる。
いつまで経ってもラブラブだから、たまに見てると恥ずかしくなる。
蛇口を捻ると勢い良く水が出てくる。
この音は”ラ”。
顔を洗って水を止めると、水滴が落ちる。
この音は”シド”
俺の世界は音符に包まれている。
「早くご飯食べちゃいなさーい」
「はーい」
幸せだった
なんで…あんなことになっちゃったのかな…
「和也っ…凄いわっ…ヒットチャート一位ですって!」
その年、母親がレコード会社に送った俺の声。
すぐに大人の人が来て、レコーディングに連れて行かれた。
こんなバカバカしいことないって思ってたら、それが凄くヒットしたんだ…