第3章 エニグマ
「…なんで死にたいんだよ…」
潤がニノちゃんのベッドに座った。
「僕は不自然な存在だから」
「…試験管で生まれたから?」
「そう。だってそんなのおかしいでしょう?僕には父親も母親も居ない。精子も卵子もないのに生まれてくる生命体なんておかしいでしょう…アメーバと一緒だ」
「それでもお前は生きてるだろ…」
「え?」
「お前は生きてる。生きてるんだったら生きなきゃいけない。それが生きている者の務めなんだ」
「人間じゃないのに…?」
「人間じゃなくてもだ。この世には無駄な命なんてどこにもないんだ。死んでいい命なんて…」
そういうと潤は顔を逸らした。
「殺されていい命なんて…どこにもないんだ!」
「潤…」
翔が立ちあがって潤の肩を抱いた。
「落ち着いて…」
「ああ…」
ニノちゃんが頭を抱えた。
「わからないよ…僕…だって僕…僕は…」
「ニノちゃん…」
ベッドに駆け寄り、ニノちゃんの肩に手を載せる。
「僕は…なんなの…?人間みたいな形をしているのに、人間じゃない…おとうさんもおかあさんもいない…生まれた時から居るあの部屋から一歩も出ることなく生きて…なにができるの…?」
また涙が零れ落ちた。