第3章 エニグマ
「ああ…そうだね。でもシュウに聞いたら、金取られそう」
「ぶっ…まあな。じゃあ、翔に聞いてみるんだな」
潤はそういうと黙りこんだ。
俺も智も黙りこんで、ただ手を動かしていた。
KAZUという歌手は小学生の時にデビューして、巷の話題をかっさらっていた。
声変わり前の伸びやかな声は、確か中学生になっても変わってなかった気がする。
カズも…N1N0の身体が幼いから、高くて伸びやかな声で歌っていた。
だからカズか…
「あんなソプラノボイスのKnockin' on heaven's doorはねえよな…」
潤が言うと、智が笑った。
「でも、なんか凄かったよね…」
「ああ…1973年の曲だぜ…?なんで知ってたんだか…」
「やっぱ、ホムンクルスだから…かな?」
「知能まで、作れるものなのかな…」
潤は扉に持たれたまま、唇に指を当てた。
「誰もおかしいと思わないのか…凄く恐ろしいことなのに…」
そのつぶやきには、いろんな想いがこもっているのを俺も智もわかってるから、敢えてなにも答えなかった。
潤がA地区で受けてきた仕打ちは、何よりも辛いものだったのだから…
「でもニノには罪はないからさ…潤…」
智が呟くと、潤は少し笑った。
「…わかってる」