第3章 エニグマ
「やっ…やだあっ…なにしてるの!?さとしっ…」
ニノちゃんはベッドの上をずりずりと逃げていく。
「ほらぁ、くすぐったいだろぉ!笑え!この!笑え!ニノ!」
そのうち我慢できなくなったのか、ニノちゃんはゲラゲラわらいながらベッドの上を転がった。
「智…」
智にもわかったんだ。
ニノちゃんのほほ笑みが本物じゃないって。
…もしかして…ニノちゃんは笑うってことを知らない…?
「やーだーっ…さとしっ…」
「ふう…今日はこの辺にしといてやるぜ…」
「なにするのぉ…もう…」
目の端に浮かんだ涙を拭いながら、でもニノちゃんは笑っていた。
本当に、笑っていた。
「なんでここ触るとくすぐったいの…?」
パジャマの裾をべろっと捲り上げて、ニノちゃんは脇腹を覗き込んだ。
「わあああっ!」
白い肌がなんだか艶めかしくて…
思わず俺はパジャマを下げた。
「え…なあに…?」
ニノちゃんは不思議そうに俺の顔を見た。
「えっとね…風邪ひいちゃうから…ね?ここは寒いから…」
「寒い…?そうなの?」
B地区はA地区よりも建物も人も少ないから、少し気温が低いのは確かだ。
だけど…今のは、言い訳…
潤と智がぷっと噴き出した。