第3章 エニグマ
”ホムンクルスの赤ん坊”
A地区ではニノちゃんはそんな風に呼ばれてた。
潤がA地区を出される頃には、10歳くらいになっていたはずだと潤は言った。
潤がここに来て5年ほど経つから、今、ニノちゃんは15歳くらいか…
そんな長いこと生きた人工的に作った生命体はいなかったから、ニノちゃんを作り出したアースノール社では宣伝活動を欠かさなかった。
潤は…自分の子供を殺された。
生まれた時に障害が見つかったから。
その障害が何かも知らされないまま、子供は取り上げられそして殺されてしまった。
潤の奥さんは半狂乱になり、そして…
ホムンクルスの赤ん坊の事を知るたび、知らされるたび、たまらない気持ちになったそうだ。
そして潤は政治団体に入って、訴えるようになる。
今の日本は間違ってる。
生命を弄ぶ者の行く末は滅亡しかない。
それでもなにも変わらない日本。
純粋培養された生命体が順調に成長しているのを、誰もおかしいと言わないし、むしろ崇めるようになっていく。
人類は無敵だ、と。
日本の科学力をもってすれば、どこの国にも勝てるはずだ。
だって、人間は作ればいい。
ニノちゃんはその象徴だった。