第3章 エニグマ
「あっ…ああああっ…」
ニノちゃんが、蹲って頭を抱えている。
バイクは床に倒れていた。
「ニノっ…」
智が駈け出して、ニノちゃんを抱きかかえる。
「どうしたんだよ!また、頭がいたいのか!?」
「う…いやっ…いやっ…やめてっ…」
「ニノっ!」
「……俺はニノじゃないっ…」
「え…?」
「ニノって呼ぶなっ…ちゃんとやるからっ…」
「どうしたんだよっ…ニノ…」
「ニノじゃないっ…」
ニノちゃんが虚空に手を伸ばし叫ぶ。
「雅紀っ…助けてっ…」
ガクンとそのまま身体から力が抜けて、ニノちゃんは智の腕に倒れこんだ。
「…どういうことだよ…」
部屋にニノちゃんを連れて行って、ベッドに寝かせる。
潤も戻ってきて、智と一緒にソファに座っている。
「ヒューマノイド…?」
「ああ…親だって…言ってた」
「嘘だろ…そこまで徹底してたのかよ…」
潤が口元を抑える。
この中では潤が一番A地区に居た期間が長い。
俺達より、ホムンクルスの赤ん坊の事を知っていた。
「翔から聞いた時は、あの赤ん坊とニノが一致しなかったんだけどな…今になって色々思い出してきたよ…」
ベッドに横になるニノちゃんを見ながら、潤は暗い目をした。