第3章 エニグマ
「とにかく…連れて行かないと、命に関わるかもしれないから…」
立ち上がろうとした翔が急に動きを止めた。
「翔…?」
翔はゆっくりとベッドを見た。
「だめ…戻らない…」
「ニノ…」
「僕は戻らない…」
ニノちゃんが翔の手を握りしめていた。
「ニノちゃん!」
「だめ…僕は…俺は…」
「落ち着いて…ニノ…」
翔がしゃがみこんでニノちゃんの髪を撫でた。
「大丈夫、ちゃんと目が覚めたからね…ここにいてもいいから…」
「ほんと…?」
「ああ…だから、気持ちを楽に持って…深呼吸しようか…」
素直にニノちゃんはゆっくりと息を吐き出した。
すぅっと吸い込むと目を閉じた。
「僕はもう…死んだんだ…殺したんだ…」
「ん…わかった。大丈夫だよ…無理やり戻したりしないから」
ぎゅっと翔の手を握った。
「やくそく…だよ…?」
「ああ…わかった」
翔が髪を撫でていると、ニノちゃんは眠っていった。
さっきと違って、安心しきった顔をしていた。
「このまま寝かせておいて…」
「わかった」
「明日、また来る」
「大丈夫なの!?翔」
「智…ちょっと気になることがあるから…一旦戻るな」
「わかった…気をつけて、翔」
翔は微笑むと、智の頭を撫でた。
「また、髪立てるスプレー買ってきてやるよ」