第3章 エニグマ
「…ダメだ…A地区連れて行かないと、詳しい所見が出せない…」
「なんで…?」
「頭のなかの写真撮らないと…」
「だめなの?その機械じゃ…」
「限界がある…このマイクロMRIは簡易的なものだから、深部の映像を捉えにくいんだ…」
手元にある機械の画面を見ながら、翔はため息をついた。
「連れていくか…」
「どうするの?」
「背負っていけば…」
ニノちゃんの頭に巻いた磁石布を取りながら、翔は組み立てたMRI用の静電枠を崩していく。
「意識が戻らないのが、危ない」
「でも頭動かしたらだめなんだろ?」
潤が翔に歩み寄る。
「ニノなら…ここまで迎えがくるかもしれない」
「え…?」
「アースノール社に掛け合えば…なんとかなるかも」
「でもそれじゃ翔がここに来てるのバレるじゃないか!」
珍しく、潤が声を荒げた。
「アースノールじゃないと…ニノの身体の事はちゃんとわからない」
「じゃあ…あの話、やっぱり本当だったの?」
「ああ…多分な。本人だと思う。ニュースにはなってないけど、どうやら行方不明みたいなんだ」
A地区では知らない人がいないくらいの有名人。
ニノちゃんは、俺達がA地区に居たとしても…手の届かない階級の人間。