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SHELTER【気象系BL小説】

第20章 The branched story2


細くて透明な声は、スポットライトの中でより一層儚く聞こえた。
天に昇っていくような声で…

そして、天に昇っていくような、願い

ニノやKAZUの生涯を、全部知ってるわけじゃない。
だけど…

彼の…
彼らの痛切な思いを…願いを、この歌に感じた。


なんでだろ…そんな歌詞じゃなかったのにね…



歌い終わったニノが、一息吐き出した。
そして立ち上がって、アコギを椅子に立て掛けるとペコリとお辞儀をした。

客席はしんと静まり返っていて。
ステージに立ってるニノを見つめたまま動かなかった。

カウンターの内側に居た翔が拍手をした。

それにつられて、客席からもパラパラと拍手が起こった。
その音に、ハッと目が覚めたように、他の客も拍手をした。
やがてそれが轟音のような大きな拍手と歓声になって…

Club lunar maria 始まって以来の、大きな拍手だった。

あんなに客の拍手が鳴り止まなかったことは、なかった。


「あれは…なんだったの?ニノ…」

客が全て捌けて、ささやかながら俺たちだけの祝宴を開いた。
酔っ払った智が、ニノに寄りかかって寝てしまって。

それを眺めながら、潤が聞いたんだ。

「ん…?なにって…歌」

ニノは微笑んで…何も答えなかった。


それから、二度と

ニノはあの歌を歌うことはなかった



そういえば、タイトルすら…
俺たちは知らないままだった

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