第20章 The branched story2
この時、ニノは笑ったんだ
僕の…雅紀…
愛してるよ…
このあと、帰ってきたスーツ姿の翔と智に見つかって…
厨房で仕込みをしていた潤にも、こっぴどく怒られて。
慌ててもう一回風呂に入って…
そりゃもう大変だったさ。
店で求められたのなんて…あれ一度きりで。
この時のことはよく覚えてる。
なんで…あの時ニノは、あんなに性急に欲しがったんだろう…
この日は、ニノが曲を作って…
ご家族と対面を果たした智を祝う曲だって言って、アコギ片手にステージに上った。
「よー!ニノ!今日は何を歌ってくれるんだ?」
アコギを持ってステージに上がったニノに、早速声が掛けられる。
相変わらず下品なだみ声で絡んでくる客に向かって、にっこりとニノは笑った。
俺は小さなスポットライトを、ニノに当てた。
「今日は、智のお祝いの曲だよ…みんな、見てた?」
スタンドマイクの高さを調整しながら、ニノはステージの椅子に腰掛けた。
どおっと客席から歓声と拍手が起こった。
「おめでとう!智!」
「良かったなあ!」
まだスーツ姿で店の隅っこの席に座ってた智が、飛び上がるほどびっくりしてて、笑ってしまった。