第3章 エニグマ
「どう?雅紀」
潤が翔を連れて部屋に入ってきた。
「変わらないよ…」
にのちゃんの汗に濡れる額をタオルで拭った。
「じゃ、診るから…」
翔は手早く持ってきたかばんを開けた。
ニノちゃんの横に座ると、布団を剥がした。
手首を持って脈を測ってる間に、体温計を耳に差し込む。
ぴぴっと音がすると体温計を見る。
「ちょっと熱あるね…」
脈を測る手をそのままに腕時計を見る。
時が流れるのが遅い。
蛍光灯からジィジィ音がしている。
「…記憶と、関係ある?」
「え?」
翔が俺の顔を見た。
「頭、押さえてうずくまってたから…」
「そっか…意識戻らないと、わからないな…」
「そう…」
潤が俺の肩を抱いた。
智もすぐそばに立って手を握っていてくれる。
「今日…営業休むから…張り紙しなきゃ…」
潤の言葉に智が頷いて部屋を出て行った。
「雅紀…座ろ?」
椅子に座らせてくれた。
「お前が倒れそうな顔してる」
「ごめん…」
「謝るなって」
立ったままぐっと肩を抱いてくれた。
「俺達が居る…」
「うん…」
翔が次々とニノちゃんの身体を診ていくのをじっと見ていた。
智が戻ってきて、潤に頷いた。
夜の闇は、深い。