第20章 The branched story2
もう一度、さっきの”キュ”について、3人で考えた。
切ないでもない…
悲しいでもない…
一体あれは、なんだったんだろう。
「……切ない、で間違いないんじゃない?」
雅紀が僕の背中に腕を回した。
「えっ…?」
「そうだな。俺もそう思う」
肘掛けに座ってた潤が、僕の肩に腕を回した。
「だってさ。智がA地区に行っちゃったらどうしようって思わない?」
雅紀が言ったことが、一瞬理解できなかった。
「えっ…」
「俺たちと暮らすことを止めて、家族を選んでしまったら…って思わなかった?」
「あっ…」
そんなこと…
そんなこと絶対ないって思うけど…
でも、一瞬でも頭を掠めなかったって言ったら、嘘になる。
やっぱりあっちの家族のほうがいいって…
智がもしも言ったら…
言われてみたら、頭の片隅でそう考えていたかも知れない。
「そうかも…いや、絶対智はそんな事言わないと思うけど…」
「ああ…そうなんだよな…俺達も、そう思ってる。でも…もしも智がそう思ったら、止める権利もないしな…不安になる気持ちは、わかる」
潤が肩に回した手にぎゅっと力を入れた。
「…わかってるんだけどな…智はそんなこと言わないって…」