第20章 The branched story2
「どうした?ニノ…」
帰りの車の中。
智と翔はまだ会見が残ってたから、チームホークの人に送ってくれるよう頼んで、僕たちは先に帰ってきた。
潤が車を運転して、雅紀と僕は後ろの座席に座った。
「ん…?」
「なんか元気ないね」
雅紀はポンポンと僕の頭を撫でた。
「…考えてたの」
「なにを…?」
なんで…欲しいって思っちゃうのかな…
僕、これ以上ないってくらい恵まれてるのに。
「…羨ましいって…」
「え?」
「智が、羨ましいなって思ったの…」
「…ニノ…」
僕には、お父さんもお母さんも居ない。
合成された人工の生命体だから。
強いて言えば…長野博士がお父さんってことになるのかな。
でも、あの人は僕をラットと同じだと言った。
だから、お父さんじゃない。
和のお母さんは…デビューしてから、僕を抱きしめてくれることはなかった。
お父さんは…どんな手をしてたかも思い出せない。
…僕も、存在しないお父さんとお母さんに会いたい…
智みたいに、抱きしめてもらいたいって思った。
今、愛する家族がいるのに…
「俺だって羨ましいぞ、ニノ」
「え?」
潤が、運転席から僕を振り返った。
「俺だって小さい頃に両親亡くしてんだ。羨ましかったぞ。今日の智…」
「そうなの!?潤もそう思ったの!?」
「あったりまえだろ。俺だって、人間なんだぞ?」
「え…?」
ふふっと雅紀が笑った。
「だから、ニノも人間なの」
「あ…そっかあ…」
人間だから
だから、羨ましいって思うんだ