第20章 The branched story2
それから一時間くらいして、イノオが呼びに来てくれて。
こっそりと僕たちは、会場を覗くことができた。
智はカチコチに緊張してて。
翔がずっと智の背中を擦ってた。
鼻血は止まったみたいで良かった。
日本国側のドアが開いて、おじさんとおばさん、それからおねえさんが入ってきた。
おじさんは智にそっくりだった。
おばさんは泣いてた。
おねえさんは、ふくれっ面してた。
智は表情まで固まって。
ピクリとも動けなくなってた。
翔が背中を押すと、躓きながら一歩踏み出した。
そうしたら、おじさん…智のお父さんが、駆け寄ってきて。
智のこと、ぎゅっと抱きしめて泣き出した。
ふくれっ面をしてたお姉さんも、泣いて動けないお母さんの手を引いて駆け寄ってきた。
背中から、お母さんもお姉さんも智を抱きしめた。
智は最初、どうしていいかわからないって顔してたけど…
だんだん目が赤くなって…それからボロボロと涙を零した。
「とうさん…かあさん…ねえちゃん…」
それからは言葉にならないみたくて。
4人でじっと抱き合って、泣いてた。
とても…
とても、僕は羨ましいと思った。