第3章 エニグマ
「なに言ってんの…雅紀…」
智は優しく微笑むと、俺を抱きしめた。
「ニノちゃん、抱いて欲しそうだった…でも俺…」
「ん…わかるよ…」
「綺麗すぎて…触れなかったんだ…」
ぎゅっと智の腕に力がこもった。
「俺だって、そうなると思う…」
ニノちゃんの白い肌。
透き通るような皮膚に、触れられなかった。
だって、ニノちゃんは俺たちと同じじゃない。
特別な子供なんだから…
智の手が、俺の頬に触れた。
身体を少し離すと、智の顔がゆっくりと近づいてきた。
唇が重なる。
智の香りが俺を包み込む。
「雅紀…好きだよ…」
「うん…智…」
唇をつけたまま、俺達は絡みあうように抱きしめ合った。
こうしていると、安心した。
ニノちゃんを腕に抱きしめている時に感じた不安はなかった。
そう…不安に、なる…
いずれはA地区に帰っていく人だから、惚れちゃだめだ。
必死でそう言い聞かせているのに、ニノちゃんは俺の心に悉く楔を打ち込んでいく。
離れられない。
俺は、絶対に傷つく…
その不安が、俺をがんじがらめにして離さない。
だから…あの皮膚に触れられないんだ…
「雅紀…大丈夫だよ…?俺たちが居るから…」
「うん…」
失うのが、一番怖い