第20章 The branched story2
しかし、がしっと顔面を手のひらで掴まれて、雅紀の動きは止まった。
「あんまり泣くから、俺が慰めてやろうとしたんだがな…松岡に掻っ攫われてなぁ…」
にやにやしながら、顔面を掴んだ雅紀の方を見てる。
「…智がな、泣くんだと。雅紀を守ってくれってさ」
「え…?」
雅紀は痛がってちょっと抵抗してたけど、動きが止まった。
それを見た長瀬さんは、フンと笑うと手を外した。
「おまえ、智に感謝しろよ…?おまえがどういう区分で入ってきたか、みんな知ってたんだから、穴だらけにされるとこだったんだぞ」
「…嘘…」
雅紀は真っ青になって黙り込んだ。
そんな雅紀を潤が立ち上がって椅子に座らせた。
「…アンタもその一人だったんじゃねえのかよ…?」
潤がそう低い声でいうと、へへっと長瀬さんは笑った。
「そりゃあな…?カワイコちゃんが居ねえんだからよ」
「長瀬さん…」
「仕方ねえだろ…そういう世界だったんだ」
少し、眉間に皺を寄せて窓の方へ目を逸した。
「…そんな世界を、変えたのが智だったんだ…」
ぼそっと呟くと、また戻っていって机の上にゴロンと横になってしまった。
「…潤…」
雅紀が潤の手を握って、顔を見上げた。