第20章 The branched story2
「えっ…いや、まあ…その…」
雅紀はちょっとだけ肩を竦めて…
「昔の話だからね…?」
そう言うと、小さい声で話し始めた。
まだ潤がB地区に来る前…
僕たちが住んでいる学校周辺は、松岡さんという人が仕切っていた。
身体も大きくて顔も怖い。
でも実は、すごく不器用で優しい人だったんだって。
それに、なんでも先頭に立ってやっていくから、自然とリーダー格になっていたんだって。
なにより、凶暴なグループのリーダー格である長瀬さんとはマブダチっていうか…腐れ縁?みたいなもので。
B地区に入る前からの知り合いだったらしい。
古株である城島さんに、そのへんのことは聞いたことはあった。
「俺は、智よりも何年か後にB地区に入れられたんだけど、その頃にはもう既に、智と松岡さんは…」
「ああ…デキてたんだ?」
「ちょ、ストレート過ぎる」
「いいだろ別に…誰も聞いてないんだから…」
きょろっと雅紀は周りを見渡して、声を潜めた。
「翔にバレたら絶対嫉妬する」
「そう?俺のほうが嫉妬酷いけど?」
「ばかだなあ、潤。翔のほうが言わないぶんめんどくさいんだよ?」
「…ニノは黙ってなさい」