第19章 The branched story1
「でも、そんなこと口に出したら…あいつらがニノを悲しませたって、心に重りを載せてしまうと思うから…」
智は僕の顔を覗き込んだ。
「だから…泣けないんだろ?ニノ」
そっと僕の髪を撫でると、智は優しく優しく微笑んだ。
「ずっとホントは…泣きたいんだろ?朝から…」
「智…」
どうして…
僕自身がわからない、僕の心の声が聞こえるんだろう。
「だーれも…見てないよ?」
「さと…し…」
「泣いて、いいよ?」
「さ…と…」
にっこり笑って、僕に向かって両腕を広げた。
「おいで」
優しい、智の香り…
「さとしぃっ…」
ぼふっと勢いよく、僕は智の胸に飛び込んだ。
「我慢なんか…しなくていいよ?」
目の奥から、次々と熱い涙が溢れてくる。
それは、いつまでも生産されて止まらなかった。
「智…智ぃっ…」
「ん…ニノ…よく我慢したね…偉かったよ」
僕の背中を擦りながら、智は僕をたくさん泣かせてくれた。
昨日という日を迎えるために、僕は皆には言えなかったけど…
たくさんたくさん我慢した。
でもそれを言ったら、子供の我儘になると思って言えなかった。
今日という日を楽しみに…ずっとずっと耐えてきた。