第19章 The branched story1
なのに…今、僕と智しか居なくて…
こんなはずじゃなかったのに…
家族で…みんなで一緒に過ごせると思ってたのに…
「さぁとしぃ…」
「ん?」
「ありがとう…」
傍に…居てくれて、ありがとう…
「なあに言ってんだよ…」
僕から身体を離すと、こつっと頭を一つ叩いた。
それから、僕の目尻にひとつ、キスをくれた。
「あんまり泣くと、目腫れるぞ?」
「うん…」
くちびる…気持ちよかった…
「もう…いっかい…」
「ん?」
「もう一回、して…?」
智のTシャツの裾を掴みながら言ったら、智はちょっとだけ赤くなった。
「ん…」
目を閉じて、今度は反対側の目尻にキスをくれた。
「もっと…」
「ん…」
ほっぺや額…それから最後に鼻の頭にキスをくれた。
「ニノ…」
「うん…」
ぎゅっと抱き合って、離れたくなかった。
智のぬくもりが、愛おしくて。
「智…もっと…」
「うん…」
ぎゅうっと抱き合った僕たちは、一つの塊みたいになった。
「もっと…だっこ…」
「うん…わかった…」
智は僕のこと、抱き上げた。
「…いい…?」
なんて、恥ずかしそうに聞くから…
「いいよ…?」
明るいから恥ずかしいよ、なんて言えなかった。