第19章 The branched story1
さわさわと風が吹いてきた。
「どうやって…」
智の前髪がさらりと風に揺れた。
今日はまだ髪の毛をスプレーで立ててない。
「デビューしようね?僕の知ってるプロデューサーさんがまだいるだろうし、方法ならいくらでもある」
「なっ…何を言ってるんだよっ!?」
「あ、そうだ。僕が曲を作ればいいね。んで、智が歌えばいいんだ。そうだそうだ」
「ま、ま、待って…」
「ニノの身体じゃ、KAZUみたいな音域の声が出ないから…智に歌ってもらうのが一番いいと思う」
「ニノぉ…」
情けなーい顔になってる。
「…そのくらい、僕は智の歌が好きだ」
「そんなの…」
「家族だからとか、恋人だからとかじゃない。僕のKAZUの才能、否定しないで貰える?」
「う…」
「僕は何千、何万の歌を…音楽を聴いたよ。その僕が、好きだって言ってるの」
また腕を引っ張って歩き出した。
「夢、一個増えた!」
「え?」
「智の歌や絵、日本…いや、全世界の皆に知ってもらうんだ!」
「も、もうやめろよ…ニノ…」
「やめないよ。智がその癖、直すまでね」
「うー…」
とぼとぼ後ろを付いてくる智は、本当にかわいらしくて…
僕のほうが年下なんだけどね。