第19章 The branched story1
顔を真赤にして照れた智は、早足で歩き始めた。
「ちょ、なんで逃げるの!」
「逃げてないっ」
「聞いてよ!智!」
「やだっおまえ恥ずかしいこと言うもんっ」
「だーっ!」
ガシッと後ろから肩を掴んで引き止めた。
「だからあっ…なんでこの話になると智は逃げるかなあ…」
「だって…俺に才能なんかないもん…」
「あるってば!じゃあなんで皆、お金払ってクラブに来てくれるのさ?」
「それはニノの歌を聴きに…」
「僕だけじゃないでしょう?そもそも毎日は歌ってないし。智の歌や絵を、皆楽しみにしてるんだよ?」
「そ、そんなこと…」
「なんでB地区で貴重なお金をわざわざ落としていってるか…ちょっと考えたらわかるでしょ?それだけの価値があるってことなの!智に!」
耳まで真っ赤になった。
首まで赤いよ…
「ち、ち…」
「違わないよ?」
もうぐうの音も出ないってこのことなんだろうな。
なんにも言えなくなって、ただただ智は真っ赤になってる。
がしっと手を掴んで歩き出した。
「皆…智の歌が好きで…」
「うん…」
「智の絵が好きで…」
「うん…」
「いい加減さ、それを否定するのは、皆のこと否定してるって、気づこうよ。智…」