第19章 The branched story1
「いや…ニノのせいじゃないんだ…」
「え?え?」
智の背中をすりすりと擦った。
「俺…こんななのにさ…」
「ん?」
「字が読めないから、皆の役に立てなくて、なんにもできないのに…」
「何いってんだよ!」
いつも僕たちに美味しい野菜を食べさせてくれて。
鶏を育ててくれて…
食という一番人間の大事な部分を智は担ってくれてたんだ。
「わかるんだ…皆、言ってくれてること…」
ぐずっと鼻をすすると、僕の顔を見た。
「食べ物だったり歌だったり…そういう部分で頑張ればいいって、わかってるんだ…」
「うん…だって、誰かがしなきゃいけない役割だよ?しかもとっても大事な部分だよ?」
「でも、やっぱり…皆と一緒に、仕事、したかった…」
「智…」
「こんなんじゃ…胸を張ってとうちゃん達に会えないって思ってた…」
「もうっ…何いってんだよっ…」
「そう、何いってんだよな…俺…」
ごしごしと目元を腕で拭うと、にっこり笑った。
「とうちゃんに教えてもらったこと…もっと深く勉強すりゃいいんだ…」
「うん!それにさ、もっと他にも方法あるよ!」
「…え?」
「智には、歌と絵の素晴らしい才能があるんだよ?」
「う、うそだ…」