第19章 The branched story1
「な、なんだよ…急にでかい声…」
「僕は、智の教科書だよ!?」
「ええっ…」
「だから、智が勉強するのに、僕が知っておくのが何で悪いの!?」
「だって、ニノにはニノの勉強が…」
「智だって勉強しなきゃ!」
口で伝えれば、智は覚えられるんだから。
だったら僕が智に伝えればいい。
「僕が、智のお父さんの代わりに教科書になったんだから…」
「ニノ…でも…」
「智が勉強嫌いなのは…字が読めないから、だったんでしょ?」
「うん…」
「でも、智はもっといろんな事知れる。理解できる。だから、僕はそのお手伝い、したい」
智は黙り込んでしまった。
「…あと、ちょっとだよ。智…」
「…え…?」
「あとちょっと前に進めば、お父さんたちに…智の家族に会える。僕も、会ってみたいな」
智の教科書だったお父さん。
「お母さんにも…お姉さんにも…僕、ここで家族ってものができたら、智の家族も見てみたくなった!」
「ニノ…」
「だからさ、会ったらびっくりさせてやろうよ!」
「え?」
「こんなに智、いろんな事知ってるんだよってさ!ね?」
みるみる智の目が潤んできた。
「あっ…ああ…えっとごめん!泣かせる気なんてなかったのに…」