第19章 The branched story1
「おーい!こっち終わったよ!」
雅紀がトマトの柵からこっちに手を振ってる。
「ああ!今行く!」
智は元気に答えると、僕を見下ろした。
「…どんなこと、教えてくれた?」
「え?」
「それ、聞きたい!智っ」
「ええっ…そんなこと言ってもなあ…面白いもんじゃないぞ?」
「ううんっ…だって、今の智を作った知識でしょう?僕、すんごい興味ある!」
「ニノ…」
雅紀が待ちくたびれて僕たちの方まで歩いてきた。
「もお。終わったよ?」
「うん!ねえ、雅紀!智が智のお父さんから教わったこと、僕も教えて欲しいの!」
「ええ?」
「でも、ニノ…ほんとにたいしたことないんだって…」
「何言ってるの!」
僕は立ち上がると、収穫した野菜を入れたかごを智に突き出した。
「こんなにたくさんの食べ物食べられるようにしてくれてるのに、大したことない知識なんてないよ!」
呆気にとられてる智に、雅紀が微笑みかけた。
「そうだよ?智…こうやって野菜を作って皆に食べさせて…それって、一番の根本で大事なことだと思うよ?」
「雅紀…」
「俺たちが、健康でお腹いっぱい食べられてるのは、智のお陰なんだからね?」
そう言って智の頬にちゅっとキスをした。