第19章 The branched story1
「智ぃー!これ、収穫できる?」
麦わら帽子を被って、皆で校舎の裏手にある畑で収穫作業。
「んー。まだだな。こっちのがいい」
「え?でもまだ小さいよ?」
「小さいのを早めに採って、これをもうちょっと大きくしてやるんだ」
「なんで?」
「栄養がこっちにいくようにね…いくつも生ってると、栄養が分散しちゃうからさ」
「へえ~…すごいね!智、よく知ってるね!」
「ん?ああ…まあな…」
照れくさそうに笑うと、その小さいピーマンをポキっともいでくれた。
「とうちゃんが教えてくれたんだ」
そう言うと額の汗を拭って、ちょっと遠い目をした。
「智のお父さんは農家だったの?」
「ん?違う違う…ただのサラリーマンだよ」
「でも野菜のこと詳しかったの?」
「いや…とうちゃんも詳しかったわけじゃないんだ…」
よっこらせと立ち上がると、腰をポンポンと叩いた。
「俺が、字が読めないってわかってたから…いつかB地区に入れられても生き残れるようにって…多分、自分で勉強して教えてくれてたんだと思う」
手に持ってるかごの中身を愛おしそうに撫でた。
「…今、俺が健康で生きていられるのは…とうちゃんが小さい頃から俺にいろいろ教えてくれたからなんだ」