第2章 Club lunar maria
闇に伸ばしたはずの手は雅紀の手にくるまれていた。
気がついたら雅紀の部屋のベッドに居た。
ベッドに寝ている俺の手を、雅紀は握っていてくれた。
「気がついた…?」
雅紀の声が掠れてる。
「気を失ったんだよ…ニノちゃん…」
「え…」
「ごめんね…」
「ううん…俺こそ、ごめん…」
何から逃げたいのかもわからないのに…
制御できなかった。
ただ、足が動いた。
自分がわからない。
「なにも思い出せない…」
「うん…」
そっと髪をなでてくれた。
温かい手…
思わず目を閉じると、さらさらと髪を撫で続けてくれた。
「もう、寝な?ここにいるから…」
「雅紀は…?」
「いいから…ね?」
髪を撫でる手をぎゅと握った。
「お願い…一緒に…」
「ニノちゃん…」
ぬくもりを…感じたかった…
無性に抱きしめて欲しかった。
「お願い…雅紀…」
放り投げられたような孤独…
そう…俺は…僕はひとり…
ひとりなんだ…
「お願い…俺のこと、どうしたっていいから」
強い、声が出た。
雅紀の瞳が揺れた。
そのまま、俺達の身体は重なった。
ベッドにくるまれて、俺の身体は宙に浮いた。
その腕が、足が、背中が…
愛おしいと思った。