第2章 Club lunar maria
「ううん…正確に言うと、何も知らない…」
「え…?」
どういうことなの…?
「正確じゃないことは知ってるの…?」
「今…翔がA地区で確認してる」
「え…?俺のこと?」
「うん。翔がニノちゃんのこと心当たりがあるって…」
「うそ…」
俺は…どこの誰なの…?
だけど…
だけど、知りたくない
「嫌…嫌だ…」
「ニノちゃん…」
「嫌っ…そんなの嫌っ…」
駈け出して裏を飛び出した。
ステージに駆け上がって、そのまま出口に走っていく。
「待って!ニノちゃん!」
雅紀を振り払うようにめちゃくちゃに走った。
校舎の中は薄暗くて…
そのまま走っていたら、後ろから雅紀に腕を掴まれた。
「待って…!お願い…」
「嫌っ…怖い…こわいよお…」
「ニノちゃん…落ち着いて…」
雅紀にぎゅうっと抱きしめられた。
もがいても靭やかな腕は俺を離してくれない。
「落ち着いて…」
「やだ…やだぁ…」
「なにが怖いの?言ってごらん…?」
「わかんない…でも怖い…嫌だ…」
闇に向かって手を伸ばす。
やめて…やめて…
そんなのいらない…
僕の欲しいものじゃない
僕は生きてる
僕は…にんげんなんだ