第18章 The beginning of the story8
潤の顔がぼやけた。
ボタボタと涙が潤の顔に溢れていく。
でも、拭うことができなかった。
「翔…どうした…」
「俺…」
俺は…捨てられた子で…
「俺は、愛され方がわからない」
親の愛…他人からの愛…友情…
そんなもの、今まで与えることも、与えられることもなかった。
ただ、俺の役割をこなして、その成果があれば認めてもらえる。
だから、危険だと言われるB地区に来ることも厭わなかった。
だって、それが俺の存在意義だと思っていたから。
実際、俺に求められていたことは、命がけで情報をもぎ取ってくることだったし。
「でも…潤…」
でも…ここに来て、家族の形…
男同士だけど、愛の形を知った
それがA地区では歪だと忌み嫌われている物だとしても。
そしてわかったんだ…
これが、今まで生きていて、俺に足りないものだったんだって。
俺が欲しくて手に入れたくて、飢えていたのは…
これだったんだ
「愛…」
自分を大事にし、自分が大事にしたいと思える人
そして、自分から求め、求められる人
「潤は俺に…愛を教えてくれるか…?」
俺は…空っぽだったんだ
だから…この人達を求めたんだ
「……当たり前だろ……」
潤の手が俺の両肩を包んだ。
「嫌って言っても……離さねー」