第18章 The beginning of the story8
「…俺、翔が好きだよ…?」
ぐいっと俺の腕を引くと、マットレスに起き上がった。
「あの話…しなきゃよかった…」
「え…?」
「嫁に…似てるだなんて…」
「ううん…俺、気にしてないよ?」
「してるだろ?翔…」
こつっと俺の額におでこをくっつけた。
「無理…してるだろ?」
「潤…」
してないのに…無理なんて。
「翔は…俺たちの家族だと思ってる。思ってるけど、A地区で暮らしてる医者だって俺たちはよくわかってる」
額をつけたまま、俺の髪を優しく撫でていく。
「ストレートの翔が、抱いてくれなんて…言うわけないってことも、わかってるよ?」
「俺、本当に…」
「翔。だって、どんな事するか、わかってんの?」
「俺は医者だよ…そんなこと、わかってる…」
ふーっと細く息を吐き出すと、もう一度潤は俺の顔を見た。
「……間違ってたら、ごめん」
しっかりとまっすぐ、俺の目を見る。
「身代わりで、抱かれてもいいって思ってない?」
「それは…」
答えられなくて、少し黙ってしまった。
「やっぱり…そう、思っちゃうよな…」
ぎゅっと俺の手を握った。
とても強い力で、痛いくらいだった。