第18章 The beginning of the story8
走るようなスピードで潤の部屋まで連れてこられた。
引き戸を開けると、何も言わず部屋の中へ入れられて。
真っ暗な部屋の中で、腕を引き寄せられて抱きしめられた。
「翔…」
潤の小さな震える声。
「潤…」
俺の声も震えていた。
ああ…
やっとこれで俺も
家族になれる
愛する、愛される家族に…
俺の身体を軽々と抱き上げ、ベッドに寝かされた。
ギシリとマットレスの音がしたかと思うと、潤が俺に覆いかぶさってくる。
愛おしそうに微笑むと、俺の頬を手のひらで包み込んだ。
「潤…」
「ああ…」
身代わりでもいいんだ…
潤はああ言ってくれたけど、簡単に忘れられるものじゃないと思う。
これだけ似てる、その事実は変えられない。
だから…
「抱いて…くれる…?」
「えっ…」
潤がびっくりした顔のまま固まった。
「で、でも…翔…」
「なに…?ダメなの…?」
「いや、そうじゃなくて…」
ぐしゃっと髪を掴むと、俺を真っ直ぐに見下ろした。
「俺…大丈夫だから…」
「いや、でも…」
「いいからっ…」
身代わりでもいいと思うくらい
俺、潤のこと
「翔…」
そのくらい、潤のこと
智のこと…雅紀のこと…