第18章 The beginning of the story8
「ごめん…あいつら…」
潤は焦って俺をそこから引き剥がすように歩き出した。
「じゅ、潤…」
ずんずん歩いて、リビング代わりの教室の前まで来た。
ため息を吐いて、潤は俺の腕を離した。
「ごめん…」
「う、ううん…」
「免疫ないのに、びっくりしただろ?」
まだちょっと濡れてる髪をぐしゃっとかき上げて、背中を向けてしまった。
「晩飯、作るからここで待ってて」
「潤っ…」
「え?」
振り向いた潤に抱きついた。
ぎゅっとすると、潤の動きは止まった。
「翔…?」
心臓のバクバク、さっきから鳴り止まない。
どうしよう…
「どうしたんだよ…」
潤の身体から、智の作った石鹸の匂いがする。
愛おしいと思った匂い。
Tシャツ越しに伝わってくる潤の体温。
いつも…
いつも欲しいと思っていた、人のぬくもり
「俺…」
「…うん…?」
「潤たちの…本当の家族になりたい…」
突然肩を掴まれた。
「翔…それって…」
風呂上がりで上気した頬の朱が、美しいと思った。
その頬に手のひらを付けると、その手を掴まれた。
ぐっと奥歯を噛みしめるような表情をすると、手を掴んだまま潤は歩き出した。