第2章 Club lunar maria
「ニノ…辛いこと、思い出したらちゃんと言えよ…?」
「うん…」
「翔が言ってたけどさ、人間って嫌なことをまるごと忘れる能力があるんだって…ニノは頭をそんなに強く打ってないから、もしかして自分で忘れちゃった可能性があるって…」
ぎゅっと潤の腕に力が入った。
「だから…もしかして、辛いことあったのかなって…ね…」
「潤…」
「言えよ…ちゃんと聞いてやるから…」
「ありがとう…」
潤の腕の中はとても熱かった。
その熱が、身体に染み渡ってくる。
「もう…いいだろ?注文溜まってるぞ」
「あ…そうだった。智…」
「うん。やるかー」
智が伸びをして表に出て行く。
すれ違いざま、俺の頭を撫でていった。
潤も少し笑うと、俺の額にキスをして出て行った。
「参った…」
「え?」
「智も潤も…ニノちゃんのこと…」
「俺のこと…?」
「かわいいなって思ってるんだよ」
「え…」
雅紀は俺の腰を抱き寄せた。
でも俯いて、顔を見ない。
「だってこんなにもニノちゃんは綺麗なんだもんな…」
「綺麗…?俺が…?」
「そうだよ…ニノちゃんは…純粋培養された子供…」
「えっ…」
「…なんでもない…」
「どういうこと…?雅紀、何か知ってるの?」