第2章 Club lunar maria
「なにって…ちゅーしたんだよ?」
「いきなりっ…ニノちゃんがびっくりしてんだろ!?」
「…だったらさ、雅紀がちゃんと守りなよ」
「え…?」
「ニノは、雅紀を選んだんだよ?ね?」
智は微笑みながら俺の顔を見た。
手のひらで俺の頬を包むと、額にゆっくりとキスをした。
「…男にキスされるの、免疫ありそうだね…?」
「えっ…」
そうなのかな…そういえば、全然嫌じゃない…
なんでだろう…
「抱かれたこと、あるの?」
「智っ…なに聞いてんだよ」
「…わかんないけど…嫌じゃ…ない…」
「そっか…A地区でなんかあったのかな…ニノは…」
智の目が、切ない色になった。
「辛いことが…あったのかな…こんなところに逃げてくるくらいだから…」
そっと智に抱き寄せられた。
「心の傷、癒えるといいね…ニノ…」
なんで…なんでこんなに智は優しいんだろう…
智だけじゃない、雅紀も潤も…翔も…
見ず知らずの俺に、なんでこんなに優しいんだろう。
「ありがとう…智…」
そっと背中に手を回して、抱きついた。
日向の匂いがした。
智が身体を離すと、潤が手を伸ばしてきた。
なにも考えずにその手に掌を載せたら、抱き寄せられた。