第17章 The beginning of the story7
「肺の音は綺麗だから…肺炎の心配はないな…」
しばらく智の顔を眺めていたけど、一旦治療は終わったようだった。
智の服を直すと、毛布を掛けて息を吐き出した。
「潤も、休んで…」
「ああ…」
雅紀がせっせと俺たちの寝る場所を作ってくれてる。
「良かった…本当に無事で良かった…」
半泣きになりながら、雅紀は体を動かしてる。
「なあ…翔…」
「ん?」
カバンに道具をしまいながら、翔は背中を向けている。
「あの時…」
あの時、一体どうやって敵を倒したんだ…?
聞きたいのに、これ以上踏み込めない気がした。
翔は、一体何者なんだ。
それを聞いたら、二度と翔は…
「いや…なんでもない…」
次の日、目が覚めると俺の腕の中には翔が居た。
少し驚いたけど、ぎゅっと抱きしめると翔も目を覚ました。
「おはよ…」
「おはよう…潤…」
雅紀は一睡もしないで智を見ていて、俺たちに朝飯を準備してくれた。
「智、大分いいみたい」
たくさん汗をかいて、よく眠っている。
呼吸も穏やかになってる。
「点滴が効いたな…よし…」
朝飯を食うと、また翔の治療が始まった。
智の身体を濡れタオルで拭きながら、翔の診察は進む。