第17章 The beginning of the story7
シュウの家を出ると、また川沿いの道に出た。
翔の荷物が増えたから、行き程は早く走れない。
そう思っていたのに、翔のスピードは変わらなかった。
来たときと同じように周囲の音に耳を澄ませながら走る。
河原に降りようとした時、翔が俺を止めた。
「翔…?」
人差し指を口に当てて、手振りで木の陰に俺を隠した。
翔の見ている方向を見ていると、星明りのぼんやりした中、闇の塊がごそりと動いた。
B地区には光源がないから、夜の闇は本当に暗く。
月明かりか星明りがないと、深夜は本当に何も見えない。
夜目が利くヤツがかろうじて動ける程度だ。
最近になって俺もやっとこの夜に慣れてきた。
「…獲物が居たぞ…」
しゃがれた声が聞こえた。
年を取っている…?
闇が蠢くように近づいてくる。
「動くなよ…?」
声が粘着質な膜で覆われているようにねっとりとしている。
糞野郎…
人の命を何だと思ってるんだ
目が眩むほどの怒りを感じたその瞬間、翔が動いた。
「翔っ!?」
思わず声を上げてしまった。
銃声が辺り一面に響いて、銃身から噴き出す炎が見えた。
何が起こったのかわからなかった。
気がついたら、翔の手には懐中電灯が握られていて。
二つの足を照らしていた。
「潤…もう、大丈夫」