第17章 The beginning of the story7
「智だって、元気になったら…いくらでも…」
「うん…うん…」
雅紀の頬にまたキスをすると翔は笑った。
「絶対、元気になる。俺が保証する」
「うん…」
ぎゅっと雅紀の頬を手で拭うと、翔は俺を見た。
「潤、行こう」
「ああ…」
部屋の明かりを最小限にして、音の出ないように隠し扉を開けて、棚をずらして外に出る。
雅紀が中から棚をずらして扉を閉めると、廊下は真っ暗になった。
「潤…」
「え?」
いきなり胸ぐらをつかまれた。
「な、え?」
びっくりしてる間に、俺の唇は塞がれた。
柔らかい翔の唇がぶち当てられるようにキスされてた。
「ありがと。行こう」
…結構…強引なのね…
給食室の裏手の戸から出ると、外は少しだけ寒い。
月明かりはなかったが、星が少しだけ出ていた。
シュウの家は、学校から歩いて10分程のところにある。
裏手の戸から出て、畑の向こうの柵を乗り越えたほうが早い。
翔に合図して走り出した。
柵を乗り越えて、林の中を少し歩く。
その間、周囲に気をつけながら音を立てないようにする。
林を抜けたら、川沿いに出る。
互いを見失わない程度の距離を取って、ひたすらシュウの家に向かって走った。
辺りの闇は、いつもと違って不気味に静かだ。