第17章 The beginning of the story7
雅紀が余計な一言を言ったから、翔は暫く口をきいてくれなくなった。
「翔~…しょうちゃ~ん…」
雅紀がご機嫌取りに必死だったけど、翔は頑なだった。
それがもうなんかおかしくて。
俺はずっと笑いっぱなしだった。
「もおっ…潤、うるさいっ!」
すんげえ翔がキレてきたけど、なにされてもおかしい状態になってた俺には燃料にしかならなかった。
「ううう…ぐふっ…も、うう…ぐるじいぃ…」
「うっさいわ…」
翔は抱きしめていた智を床に寝かせると立ち上がった。
「じゃあ、行ってくる」
「えっ…」
「保健室に薬、取りに行ってくる」
「だめだって…まだあいつら近くにいるんだから」
「でも潤、智に早く薬飲ませてやりたい」
「翔…気持ちはわかるけど…」
「そうだよ。俺たち薬のない環境で生きてきてるから、慌てなくて大丈夫だから」
「今、外に出るのは本当に危険なんだ。昼間ならまだ…」
って、一生懸命俺と雅紀が言っているのに、翔は全然聞いてくれない。
「解熱剤と消炎症薬と抗生物質と…あ、あのカバンはシュウの小屋か…」
ぶつぶついいながら指を折ってる。
「翔ってば!聞けよ!」
「俺は医者だよ」
「え?」
「今までは大丈夫だったかもしれないけど…このまま悪化して亡くなるケースだってあるんだ」