第17章 The beginning of the story7
そんなこと、気軽にできるわけねえだろ…
そりゃ、キスした。
翔は俺たちと家族になりたいと言ってくれた。
だけど翔はストレートなんだぞ
A地区の人間なんだぞ
……帰っていく…人間なんだぞ……
いつ、こっちに来られるかなんてわからないし、いつ来られなくなるかもわからない。
そんな人間を、こっちの世界に引きずり込んでいいのか
そんなことしたら、翔はB地区送りになるじゃないか。
そんなことになったら、俺は…死んで詫びるしかねえじゃん。
「気軽に言うなよ…翔は、A地区の人間なんだぞ…」
ぐりぐりしてた手が止まった。
「潤…」
「そりゃ、好きだよ。認める…だけどさ…だからこそさ…」
「うん…」
「いつ狩りが始まって、いつ死ぬかわからないから、後悔はしたくねえよ…だけど、翔のこと考えたら、踏み出せねえんだよ…」
雅紀の手がこめかみを優しく撫で始めた。
「…まあね…潤が、躊躇するのはよくわかるよ…」
潤もなんだかんだ、悩み性だもんね。
なんて、雅紀は笑う。
「悪かったな…」
「別に悪いことじゃないじゃん。智なんて直情だし、俺は元々ゲイだから倫理観おかしいし…潤がよく物事を考えてくれるから、俺たち助かってんだよ?」