第2章 Club lunar maria
「…参ったな…これは明日も出せって言われるな…」
潤が頭を掻いた。
「え…?また歌っていいの?」
「ニノちゃん…歌いたいの?」
雅紀が優しく髪を撫でてくれる。
「え…わかんない…でも、凄く楽しかった…」
「そっか…潤…」
「まあ、いいだろうよ…」
潤はタバコに火をつけて、じっと俺を見た。
「大丈夫、俺がフォローするよ」
智がにこにこしながら潤を見る。
潤は諦めたように目を閉じた。
「まあ、なにか思い出すかもしれないし、いいだろう」
「で、なんか思い出した?ニノ」
智が俺を振り返る。
「う…わかんない…でも…」
「でも?」
「あのスポットライトの中…知ってる」
「え?」
「あの光の中に、居たことがある気がする…」
三人は目を合わせた。
「…そうか…翔がきたら、それも言ってみたら?」
潤が煙を吐き出した。
「うん…」
雅紀が優しく俺の腕をとった。
「さ、ニノちゃん、もう休もう?今日は疲れたでしょ?」
「あ…ひ、一人はヤダっ…」
「ニノちゃん…」
「雅紀、一緒に寝てやれよ」
潤がタバコを灰皿に押し付けた。
「潤…」
「今日はもうお前の部屋には行かないから…」
そう言って背中を向けた。