第17章 The beginning of the story7
翔と話し合って、だいたいどんなものにするのか、設計図みたいなものは簡単に書いてあった。
そしたら、住民の中に元建築士が居て、綺麗にそれを図面に起こしてくれた。
「ま、後は…掘ってみて土の性質みてみないとな」
そう言って笑うのは、城島さんという古株だった。
そして、驚くことに城島さんは掘削に必要な道具を揃えてくれていた。
「これ…どうしたんですか?」
そう聞いたら、城島さんはにやりと笑った。
「長瀬や」
「え?」
「あいつら、金目の物たくさんもってるんやわ。そん中にシャベルやらスコップやらわんさかあったもんで、借りてきた」
「借りてきた…」
長瀬、とは。
凶悪犯罪を犯した奴らのグループのリーダー的存在の人で。
松岡さんとやらが生きていたとき、長瀬という人と松岡さんの間に協定みたいものがあって、一切こちらには関わってこなかったとこの前聞いた。
それは、今でもどうやら有効のようだ。
だから、B地区でも学校周辺は平和なんだ。
「城島さんも、長瀬って人と知り合いなの?」
「まあな…お互い、B地区ができた頃に放り込まれたメンバーの内の一人やからな…」
「そっか…」
俺なんかと違って、城島さんはもう何十年もB地区で生きてる。
その間に起こったことは、俺には知る由もない。
誰も、語りたがらないし。